不正に交通費をせしめたい女

派遣社員にかかわる法律について

派遣の交通費はなぜ出ない?オトクに働くために必要な知識

2019年8月31日

派遣求人を見ていると、「交通費全額支給」または「一部支給」と掲載されていることがあります。

いざ求人を選ぶとき、交通費支給があるかないかで判断をするべきか?悩まれる方も多いでしょう。
あるいは、すでに派遣会社と話を進めていて、「交通費ナシなら時給をアップできないだろうか」と考える方もいるかもしれません。

本記事では、交通費の自己負担についての法的な見解から、派遣の交通費事情、確定申告に関わる話題などをまとめた内容をシェアします。

交通費は自己負担が当たり前?

派遣のお仕事で、高時給とは言え交通費がかさむ通勤距離の場合、「これって、自腹で払わなきゃいけないの?」と考えてしまいますよね。
法的なルールからいえば、以下の第485条によって、労働者側が負担をすることにはなっています。

第四百八十五条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

引用:イーガブ 電子政府の総合窓口

「でも、正社員や他の従業員には支給されてることもあるじゃん…」となることもありますが、単に企業ごとの福利厚生格差といえますね。
違う会社に勤めるサラリーマンに「オレはアイツと同じくらい働いてるのに交通費が出ない!」とクレームを言っても、聞き入れてもらえないことと一緒です。

メモ

ただし、今後は同一労働同一賃金政策の普及によって、同じ企業内で業務内容の正社員だけに交通費が出てるケースなどは、会社によっては改善されていく可能性はあります。

実際に、リクルートスタッフィングで働く派遣スタッフが、正社員のみに交通費が支給されるのは違法だとして、裁判を起こした事例もあります。

正社員に支払う通勤手当を払わないのは違法だとして、人材派遣会社リクルートスタッフィング(東京)の元派遣スタッフの男性(46)が、未払い交通費約72万円を同社に求める訴訟を7日、大阪地裁に起こした。

訴状によると、大阪府富田林市の男性は2014年9月~昨年6月、同社の有期契約の派遣スタッフとして輸送会社の府内事業所など5カ所で勤務。時給は1100~1350円で、1日あたりの交通費往復1180~1580円は自己負担だった。

引用:朝日新聞デジタル

派遣の交通費とは

交通費の上限については、交通機関または有料道路を利用している場合、一ヵ月の限度額が15万円に引き上げられています。
(※平成28年の税制改正により、10万円➡15万円へ)

自動車や自転車を利用する場合には、下表の距離数によって、非課税額が変わってきます。

通勤距離 課税されない金額
片道55キロメートル以上 31,600円
片道45キロメートル以上55キロメートル未満 28,000円
片道35キロメートル以上45キロメートル未満 24,400円
片道25キロメートル以上35キロメートル未満 18,700円
片道15キロメートル以上25キロメートル未満 12,900円
片道10キロメートル以上15キロメートル未満 7,100円
片道2キロメートル以上10キロメートル未満 4,200円

「交通機関(電車やバス等)」「有料道路料金」「通勤距離に応じた非課税金額」これらすべてを合算した金額が、上限15万円で非課税対象となります。

注意

国税庁ホームページで確認すると、非課税となる交通費の対象は経済的かつ合理的な経路・方法に限るとされています。
たとえば、高速代などは、経済的かつ合理的かどうかの判断が会社によって分かれるでしょうから、使うときははっきり確認する必要がありますね。

また、駐車場代金については、交通費に含まれませんので、自己判断で使わないよう注意してください。

通勤手当の非課税限度額:
国税庁ホームページ

派遣会社が交通費を時給に含める理由

派遣に限らず、交通費を別途支給されるとオトクな理由は、非課税となるためです。
派遣のように、「高時給」だけど交通費を含んでいれば、受け取る基本給すべてに所得税がかかってしまうため、交通費を別にしてもらった方が良いわけです。

ではなぜ、派遣会社が交通費を含めた時給額を提示するのか?その事情は、以下の2つがあります。

  • 求人広告で競合他社より高時給に見せるため
  • 派遣スタッフごとに毎日の交通費を算出する事務処理コストをカットするため

私も以前派遣されていたお仕事で、毎日出退勤で使う交通機関ごとにかかる交通費を手書きで報告していたことがありましたが、派遣スタッフの報告すべてを受ける側の負担を考えれば、コストカットの意識が高い大手なら当然のルールかなとは思います。

たとえば、外回り営業のある派遣スタッフなら、毎日移動する距離が変わることや、場合によっては「〇〇日分の請求し忘れた」「この間計算間違えて請求してしまった!」などの人的ミスによって、さらに負担が増えることも懸念されますね。

まとめ

つまり、派遣に関しては、交通費の負担が大きすぎることを理由に、時給額のアップを交渉するのは、大いにアリだと言えます。
派遣会社側としても、特定の派遣スタッフだけに交通費を設定するよりは、時給をアップさせてしまった方が、コスト面ではメリットが大きい場合もあるからです。

時給に交通費を含めるor含めないどっちが得なの?

結論から言えば、交通費は別で支給されたほうが、かかる税金が安くなるのでオトクです。

しかし、時給(給料)と交通費どちらも派遣元会社が負担する場合、「交通費込みなら時給は〇〇円下がってしまいます」などとなると、一概にどちらが良いか比較が難しいところです。

給料にかかる税金は、所得税と住民税です。

一般的に、給料が上がれば所得税、住民税の負担も上がるため、交通費込みの時給の方が、支払う税金も高くなります。
また、社会保険料に関しても、4月・5月・6月の平均給料額を元に計算されますから、高くなる可能性はありますね。

(※定年後受け取る年金額は、社会保険料に比例してアップします)

例として、時給1,500円で交通費込み、時給1,400円で交通費月に12,500円支給されたとして、所得税を計算します。

<案件A>

時給1,500円/7.5時間労働/出勤22日/交通費込み/社会保険料控除20,000円

=(1,500 × 7.5 × 22)- 20,000(※社会保険料控除)

= 227,500円

所得税額:5,780円

<案件B>

時給1,400円/7.5時間労働/出勤22日/交通費月10,000円支給/社会保険料20,000円

=(1,400 × 7.5 × 22)- 20,000(※社会保険料控除)

= 211,000円

所得税額:5,200円 + 10,000円の交通費

参考:https://keisan.casio.jp/exec/system/1527476109

しかし、たとえば案件Aが「月残業15時間」となれば、保険料や所得税額と共に手取り収入もアップするので、単純に稼きたいのであれば、高時給案件を優先的に選んだ方が良いです。

ほぼ同じくらいの時給であれば、交通費別途支給の方がオトクであると考えておけば、問題ないでしょう。

交通費を懐に入れちゃうのは合法?

私が以前、ラウンダー(※派遣先の営業マンとお得意先を回るお仕事)として働いていたとき、駅前でレンタカーを借りてお得意先を回り、業務終了後は返却をして、徒歩で帰宅するサイクルでした。
あるとき派遣先の上司から、「バスで帰ってることにして、交通費フトコロに入れれば?」と冗談交じりに言われたことがあります。

結局、私はバス代の請求はしなかったんですが、会社の就業規則や雇用契約内容によっては、やってもOKなパターンはあると思います。
ただ、自己判断で勝手に受け取るのだけは、オススメできません(;'∀')

ポイント

通勤方法が規定と実態がマッチしていれば良いので、たとえば、電車通勤なら定期券を購入すれば割引価格になりますし、クレジットカードを持っている方は、さらにポイントもついてオトクになります。

参考:JRの定期券はクレジットカードの分割払いで6ヶ月定期を購入したほうがお得なのか、それとも1ヶ月ごとに購入したほうが得なのか。

ただ、定期券は月単位でしか払い戻しができないので、万が一派遣切りや雇い止めになってしまったら、ソンになりますね。

確定申告時に特定支出控除の申請をできる派遣スタッフはほぼいない

時給に交通費が含まれていても、特定支出控除という制度を利用すれば、確定申告で還付金が戻る可能性はあります。

特定支出控除とは、年間で使った交通費を申請して、給与所得控除額の1/2(最高125万円)を超えた分だけ、控除を受けられる制度です。

給与所得控除とは、会社員が給料から所得を計算するときに差し引かれる項目です。
収入が多いほど控除額は高くなりますが、最低でも65万円に設定されていますので、ひと月当たり約54,000円以上のペースで交通費を使っていないと、特定支出控除を受けることはできません。

特に都市部に勤務していて、通勤ラッシュ時の時間帯に満員電車を利用しなければならない場合に転職を考える人は多めです。

会社が遠いとそれだけ満員電車に揺られる時間が長くなりますし、ダイヤ乱れで駅に入場規制がかかって会社に行けないというパターンもあります。

このような毎朝感じるストレスから開放されたいと考える人は多いので、「会社が遠いから辞めたい」と思ってしまうのは自然なことだと言えます。

引用元:【通勤キツイ】会社が遠いから辞めるってアリなの?転職前の注意点

大手派遣会社の交通費アリ求人数は?

下表は、大手の優良派遣会社の中から、「交通費支給アリ」で掲載されている求人数を調べたデータです。

派遣会社名 求人数
テクノサービス 16,367
ウィルオブワーク(※旧セントメディア) 11,071
マンパワーグループ 7,353
アデコ 5,776
ランスタッド 4,577
パソナ 3111
ヒューマンリソシア ※検索不可
スタッフサービス ※検索不可
リクルートスタッフィング ※検索不可
テンプスタッフ ※検索不可

「交通費支給アリ」で検索できない派遣会社もありましたが、「ウィルオブワーク(※旧セントメディア)」「テクノサービス」の2社が突出して求人数が多いことが分かりました。

ただ、交通費の支給は全額ではなく、一部支給のケースもありますし、時給そのものが低い求人ならオトクとはいえないので、交通費の有無で派遣会社や求人を選ぶのは、少しズレているのかもしれません。

それよりは、少しでも高時給で働ける求人を探す努力をした方が良いでしょう。

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